源氏物語 第五十三帖 手習より 浮舟、出家して手習する 其の二

 時期は九月、手習に勤しむ浮舟を描いた。手前の人物はお付きの女房のつもりで描いた。小野の住まいは本文で簡単に触れていて、山の斜面にあるという。イメージは懸崖造りのお寺だ。宿木で高欄にふれた。もう少し上手に描けるまで高欄は書きたく無かったが懸崖造りの建物に手摺りが無いのは考えられない。どうしてもここで描かざるをえない。しかも金箔下地のところは修正も難しい。何度も練習してやっとの思いで描きあげた。けっして上手では無いが、私にとっても手習いだった。

源氏物語 第五十三帖 手習の貝合わせ
片側の貝に描かれた同じ構図の絵

 この時に浮舟はすでに出家しているので、尼削ぎと言うおかっぱ頭の様な髪型になっているはず。しかも豪華な小袿姿で金蒔絵の机に向かっている。だが、髪については、若い女性が出家してもバッサリ髪を落とす事はなく、端をお愛想程度に切ったと言う説が有力らしい。豪華な小袿姿は、出家した姿があまりよく分からなかった事と、私がイメージしている出家姿だと恐ろしく寂しい絵になりそうなので、全て画面構成上の配慮と思ってお許しいただきたい。
 後で小耳に挟んだ事だが、この時代は机の上で文字を書く習慣は無かったかもしれないとのことだ。申し訳ないが未確認事項である。また、右に板壁を置いたが、少し怪しい。蔀戸か、縦張りの板壁が良かったかもしれない。

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