源氏物語 第五十四帖 夢浮橋より 小君、薫からの手紙を渡す 其の二
浮舟は薫からの手紙を見ても人違いだと言い張り返事を拒みます。小君は姉にも会うことも、手紙の返事をもらうこともできず帰って薫に伝えます。薫は浮舟が誰かに囲われているのではないのかと疑問を持ちながら、親子三代に渡る物語はあっけない形で終わります。
片側の貝に描かれた同じ構図の絵 |
手習のところでも触れたが、美麗几帳や浮舟の衣装が豪華になっているが、全て画面構成上の配慮と思ってお許しいただきたい。
初めて私の作品を見た方に何で描いてますかとよく聞かれる。手に取って覗き込む様に見ると一部の絵の具がキラキラと光って見えるかららしい。私が使うのは日本画の絵の具、それも岩絵の具を主に使っている。日本画の大きな作品だと見落としがちだが、岩絵の具は石や色ガラスを砕いて作るので、粒子の粗い絵の具はグラニュー糖の様にキラキラする。「日本画」までは良いが、プラス「の絵の具」が付くとあまり馴染みがないかもしれない。
絵の具とは顔料を展色剤で溶いて基底材に定着出来るものだ。おおまかにその展色剤の種類で、亜麻仁油や芥子油だと油絵の具、アラビアガムだと水彩絵の具、卵を使うとテンペラになる。これらの絵は仕上がりが顔料の濡れ色になるので顔料の粒子の差で大きく色が変わることはあまりない。日本画の展色剤は膠を適度な薄さで使う。仕上がりは顔料そのものの色に近い。日本画の絵の具の顔料には色々な物が用いられるが、代表的なものはやはり岩絵具だろう。天然に産する物が多く自然からの頂き物だ。岩絵具は天然の鉱物や色ガラスを粉砕して作る。同じ絵の具でも粗い顔料は濃く、微細な顔料は白っぽく発色する。絵の具によって膠の濃度や溶き方、塗り方まで違う、混色が自由にできないなど色々な制約もある。しかし、美しいものを描きたいので美しい絵の具が必要だ。宗達の緑青、光琳の群青、若冲の辰砂、それはそれは美しい絵の具だ。現代の絵の具とは多少違うかもしれないが、同じ絵の具で絵を描くことができるのは幸せなことだ。先人達の足元にも及ばないが、美しい絵の具で少しでも美しい絵が描けたらと思う。
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