箔盤を作る〈三〉

  赤い箔盤は唐木製だ。なんちゃって紫檀と呼んでいる。天板はブビンガ、側面と土台は本花梨(パドウク)、盤止めの桟はチークを使用した。ずしりと重く、重厚だがたぶん二度と作らないと思う。

 蓋を作るとき、四角く組んだ側面に大きめの天板を貼り、余分な所をノコギリで落としてサンドペーパーで磨いたのだが、恐ろしく硬い。こういう作業は余分な力が入ると曲がったり仕上がりが悪い。でも、余分な力を入れないとまったく歯が立たない。側面はキズだらけになった。ヤスリ掛けでなんとか見られるようになったが、最後の仕上げは途中で放棄した。後で気が向いたらきれいに磨いて木目を出してやろうと思う。このまま箔盤として使うには何も問題が無い。


 こちらの鹿革はキョンセーム。カメラや眼鏡のレンズ拭きに使う物だ。中にはフェルト布だけを入れた。ディアスキンよりずいぶん硬い。二種類作ったがいずれも皮を張る時はかなり強く引っ張った。パンと張っていた方が結果が良かった。また、バックスキンを使うという固定観念があった。これは間違いだった。いま思う所があるので、機会があったらもう一種類作ってみようと思っている。箔盤は取り外し可能で、色々用意しようと思っている。私のことなのでいつになるか分からないが、作ったら報告したいと思う。


肝心の切れ味だが、正直分からない。キョンセームとディアスキンの差さえよくわからない。技術が伴わないから分からないと言ってしまえばそうなのかも知れない。ただ、かねてから薄々感じていたのだが、箔を截る場合に重要なのは竹刀、もしかしてそれよりも重要なのはタルクかもと。それはヴァイオリン(箔盤)と弓(竹刀)と松脂(タルク)の関係に似ているような気がする。どんなに高価な名器でも弓に松脂が塗って無ければ音が出ない。取りあえず結果は急がず、使ってゆくうちの何か分かるかも知れない。とにかくこれで、仕事が終わったらいちいち金箔片をしまわなくて済む。


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