源氏物語 第四十七帖 総角より 薫、紅葉を葺いた舟で遊ぶ 其の一
匂宮は中の君と思いを遂げたが、その身分ゆえ自由な行動は取りづらく、なかなか宇治には行けないでいた。十月上旬頃。薫は、網代も面白い時期だろうと匂宮を誘って、宇治への紅葉狩りを計画する。途中で宇治の山荘へ中宿りすることを決め、姫君たちに匂宮が立ち寄る事を伝えます。姫君達は屋敷を整え匂宮を待ちました。
【本文】
舟にて上り下り おもしろく遊びたまふも聞こゆ ほのぼのありさま見ゆるを そなたに立ち出でて 若き人びと見たてまつる 正身の御ありさまは それと見わかねども 紅葉を葺きたる舟の飾りの 錦と見ゆるに 声々吹き出づる物の音ども 風につけておどろおどろしきまでおぼゆ
【意訳】
舟で上ったり下ったりして、賑やかに合奏なさっているのが聞こえます。ちらちらとその様子が見えるのを、そちらの方へ出て、若い女房たちは見物なさいます。ご本人のお姿は、その人と見分けることはできませんが、紅葉を葺いた舟の飾りが、錦の様に見え、様々に吹き出した笛の音が、風に乗って騒々しくらいに聞こえます。
しかしこの日も匂宮のもとへ宮中から大勢の人が訪れ、宇治の山荘へ訪れることはかないませんでした。
〈其の二〉
コメント
コメントを投稿