箔盤を作る〈一〉
かねてから箔盤を新調しなくてはと思っていた。箔盤とは金銀箔を竹刀で切る時に使用する台のことを言う。クッションを敷いて弾力を持たせ、動物の皮を張り、紙やすりで表面を整えてある。使用の際は、金属箔が道具にくっつかないようにシッカロール(タルク)をまぶして使用する。
箔盤2種 |
今迄使用していたのは学生の時に購入した物で、しょっちゅう使っているわけじゃないが、40年は使用している。もう使えないということではないが、膠のシミであちこちが汚れている。道具を汚すのは仕事が下手な証拠だ。最近はそれなりに上手くなっているので汚れた道具は下手を証明しているようなもので、人に見せることは無いが自分で嫌だ。何よりハダカの盤だけでなく蓋付きの箱にしたい。そういうわけで蓋付き箔盤を作る事にした。
金箔はわずかな風の流れでフワフワと動く。とくに私は金箔を小さくきって使っているので、ちょっとした空気の動きでどこかへ行ってしまう。作業を終えた時、その日使わなかった小さな金箔片を何十片も箔合紙に挟み込み戻すことになる。その時間と手間をどうにかしたい。蓋があれば、蓋をかぶせるだけで本日の作業終了となる。
箔は何種類も使うが、よく使う四号箔と五毛箔用に二種類の蓋付き箔盤を作ることにした。指物師に注文という手も有るが、そんな余裕は無い、というか、そんな面白そうな工作をお金を出して他人に頼む気が知れない。どうせ作るのなら素材も美しい方が良い。天板にする材をwebで探し、赤と白の木目の美しい板を見つけたので早速購入。他のパーツは材木を寸法で切ってくれる所があるのでそちらへ注文した。
肝心の皮だが、中国の技法書、天工開物(1637)には良くなめした猫皮を使うとあるらしい。三味線屋で四つ皮を調達しようとも思ったが、家内を始め色々な人を敵に回しそうなので見送る事にした。現在一般的には鹿皮が良いとされている。そこでディアスキンとキョンセームの二種類の鹿皮で作って見る事にした。
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